……ひとつだけ、三年前について気がかりなことがある。

 都と朝陽がふたりでいる場面を見た後の記憶は、いまだに戻らない。彼女がその時に妊娠していたとすれば、俺が事故に遭ったのはそれから間もなくだろう。

 当時の俺も、ちゃんと都を信じていただろうか。嫉妬しただけでなく浮気を疑って、彼女を責めたりしていないよな?

 彼女が病院で泣いたのは、俺が酷い言葉をぶつけたからなのではないか。そんな不安が生まれたのだ。

 とにかく話をして、あの頃の想いも重ね合わせたい。嫌な思いをさせただろう昴にも謝りたい。俺たちは家族になるのだから。

 数分走ったところで、ふたりの後ろ姿を発見した。ほっとしたのもつかの間、昴がじっと道路の方を見ているのに気づき、漠然と嫌な予感がした。

 その予感は的中し、都が手を離した瞬間に走り出す。彼が向かう先の信号は赤だ。俺はひゅっと息を呑み、咄嗟にバッグを手放して一目散に向かう。

 いくら君に怖がられても、『やだ』と言われても、俺は愛しい君を守るためならなんだってする。

「昴、止まって!」という都の叫び声が響いた直後、俺は小さな身体に精一杯手を伸ばしていた。