身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 急に蘇り始めたたくさんの記憶が、頭の中で交錯して気持ちが悪い。「嘉月さん!?」と心配する都の声が聞こえるが、混乱で反応を返す余裕もない。

 頭を抱えたままなんとかひとつずつ整理していこうとしていると、鈴加さんが俺の腕をそっと支えて囁く。


「実は事故に遭う数日前、今と同じように副社長も私と一緒に目撃していたんですよ。都さんが、霜平さんと密会しているところを」


 それを聞いた瞬間、先ほどの記憶がリンクして目を見開いた。

 ……ああ、そうだ。彼女の言う通り、俺はふたりを見ていた。道端のベンチに座って話していた映像はその時のものに違いない。

 確か伯父の代わりに俺が鈴加さんと外へ出ていて、偶然都たちを見つけたのだと思う。

 ふたりで会うなんて聞いていない。困惑しながら呆然とその場面を目に映していると、朝陽が手を伸ばして都の髪に触れる。急激に黒い感情が込み上げ、俺は目を背けた。

 なぜあんなに親密そうにしている? 彼女に触れるのは俺だけでありたいのに。

 ふたりは俺を裏切るようなマネはしない人だ。きっとなにか理由があるのだろう。しかし、この時は嫉妬から自分でもなにを言うかわからなかったため確かめようとはせず、鈴加さんに『先に行く』と告げてふたりに背を向けた。