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鈴加さんが都に会いに行き、身を引くよう言ったと聞いた時は怒りを覚えた。
おそらく、俺と都が再会したと知って危機感を覚えたのだろう。俺と関係を持ったなどと嘘を信じ込ませようとしたのも、都を諦めさせることができなそうだったからなのかもしれない。
それらがわかって感じた怒りは、鈴加さんよりも彼女を婚約者にしたいと勝手に言っているらしい母に対してのほうが大きかった。変に期待させたせいで、鈴加さんを焚き付けてしまったのだろうと。
事故当時、都の存在が俺の負担になるというようなことを母が言い、婚約破棄したのだという。それは百歩譲って理解できるが、三年もその事実を隠し、今も邪魔しようとするのは許せるわけがない。
とにかく話をしようと、デートをした翌日には実家に電話をかけていた。
「母さん、会わせたい人がいる」
久しぶりの連絡にもかかわらず、単刀直入に告げた。電話の向こうからは、ひと呼吸置いて落ち着いた声が聞こえてくる。
『……どなた?』
「明河都さんだ。よく知っているだろう」
その返答はなく、電話越しなので向こうの様子もわからないが、俺はただ自分の意思を伝えるだけだ。



