身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


「……君は、蝶のピアスを失くした覚えはあるか?」
「え?」


 しばし黙考してから問いかけると、鈴加さんは意味がわからないというようにキョトンとした。


「俺の寝室に落ちていたんだ。もし俺たちが関係を持っていたなら、君のものかもしれないと思って」


 冷静にそう説明すると、彼女は合点がいったのか表情がぱっと明るくなる。


「ああ、副社長の部屋にあったんですね! どこで失くしたのかわからなかったんです。よかっ──」


 話している最中に手の平を開いて見せた瞬間、彼女は笑みを強張らせて口をつぐんだ。俺の手の中にあったのは蝶ではなく、花のモチーフのピアスだったから。


「俺の部屋に落ちていたのはこれだ。蝶じゃなくて花」


 彼女の話にはどうしても違和感があったので、申し訳ないがカマをかけさせてもらった。ピアスを見つけた直後に電話がかかってきて、咄嗟にポケットに入れたまま出てきてしまったのだが、ちょうどよかった。


「本当に俺たちはそんなに親密な仲になっていたのか?」


 顔が険しくなっているのを自覚しつつ問いかけると、鈴加さんは焦った様子で目を泳がせるも譲らない。