身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


「結婚するの? 今度こそ」
「そうしたいと思ってる。けど……」


 結婚についてはしっかりと頷くも、お母様のことがあるので苦笑が漏れる。


「この間お母様に会って、またけん制されちゃった。嘉月さんの秘書さんと婚約させたいと思ってるみたい」


 電車を動かして遊んでいる昴を横目に言うと、彼の眉根がぎゅっと寄せられる。


「なにそれ。秘書って、鈴加さん?」
「そうそう。朝陽くんも知ってるんだね」


 セーライに行き来しているなら会ったこともあるだろう。彼はなぜか訝しげな顔をする。


「なるほどねぇ……鈴加さんがうまいこと青來家に取り入ったんじゃない? あの人は、ああ見えて結構あざといから。かづ兄の前では猫被って接してるから、俺もそれに合わせてるけど」


 こんなにざっくばらんに言うとは、朝陽くんは鈴加さんの本性も知っているのだろう。わりと親しい関係なのかな。そしてやっぱりあざといのね……。

 先日の彼女を思い返していた時、入口のドアが開いてお客様が入ってくる。なんの気なしにそちらを振り向いた朝陽くんが、「げ。噂をすれば」と嫌そうな声を漏らした。