「ご無沙汰しております。明河社長」
「嘉月くん、よく来てくれたね。元気そうでよかった」
父は感慨深げに笑みを浮かべた。ふたりは、私たちがお見合いするより前から仕事の関係で会っていたので、嘉月さんにはビジネスパートナーとしての父なら記憶にあるらしい。
ひとまず上がってもらった直後、廊下の奥から昴がトコトコと走ってきて、私の足にしがみついた。
「昴、かーくんが来てくれてよかったね。会いたかったんでしょ?」
「こんにちは。久しぶり」
私と嘉月さんとで顔を覗き込むと、昴はなぜか私の陰に隠れてしまった。
もじもじしている彼を見て、私はすぐに理由がわかったけれど、嘉月さんはまたしてもショックを受けている。
「やっぱり嫌われてる……?」
「たぶん恥ずかしがってるだけ。パパだって思ったら緊張してるみたい」
シュンとする嘉月さんも可愛いなと思いながら小声で言うと、彼は息を吹き返した花のようにすっと背筋を伸ばし、「なるほど」とひとりごちた。そして、再び昴に向かって話しかける。



