「もう少し、涼しい時期だった気がする。君は確か、白いロングワンピース姿で……耳にはこのピアスをつけていた」
言葉にして自分自身で確かめるように言い、彼が指で摘まんで持ち上げたのはレトロな色合いのフラワーピアス。懐かしいそれを見て、私は口元を両手で覆った。
「これ……!」
「寝室に落ちていたよ。ついこの間見つけて、今日君のものか聞こうと思っていたんだ」
すぐそばに来た彼からそれを受け取ると、当時の思い出が鮮明に蘇って、瞳に涙の膜が張る。
「……ふたりでここに来た後、嘉月さんのマンションに行ったんです。これを外してバッグにしまったつもりでいたんだけど、寝ぼけていたのかな。自分の家に帰ってから、失くしたことに気づいて」
まぬけな自分を思い出し、泣きそうになりながら笑った。そんな私の頬に、嘉月さんがそっと手を当てる。
「やっぱり俺は、あの頃も君を愛していたんだな」
噛みしめるように言う彼の瞳が、私だけを映して切なげに揺れる。
「ここへ来たあの日も夕日が綺麗で……君は『夕方の海ってオルゴールみたい』と言って。俺はそんな都を、なによりも愛しいと思った」
私の頭の中を覗いたかのごとく同じ記憶が彼の口から語られて、堪えきれずに涙が溢れた。



