「俺も、都がいれば屋台のラーメンだってごちそうになるよ」
緩やかに口角を上げた彼は嬉しそうに見える。ほっとすると同時に胸がくすぐったくなる感じがして、私もクスッと笑みをこぼした。
それから気ままに見つけたレストランで食事をして、美術館を見たりショッピングプラザでお土産を買ったりと、定番のデートを満喫した。
結局、彼が思い出しそうな気配はなくて少し切なくなったけれど、楽しいことに違いはない。ふたりきりの時間を過ごせて本当に幸せだ。
少し太陽が落ちてきた午後四時、森戸大明神という神社にやってきた。
神聖な雰囲気の参道を通って階段を下りていくと、海の向こうにある灯台や赤い鳥居が神秘的な裏海岸に出る。晴れた日には富士山も見え、夕日が沈むサンセットも絶景なのだが、砂浜というより岩場なので人はそれほど多くない。
まだ日が沈むには早いが、空は若干オレンジがかってきて、ゆらゆら揺れる海面に光が反射して輝いている。
「すっごく綺麗……」
浜辺をゆっくり歩いて波打ち際に近づきながら、感嘆のため息をこぼした。ここの景色は変わらなくて、ちょっぴり切なくなる。



