「昴くんには悪いが、今日はママをひとり占めさせてもらう」
そんなふうに宣言されてキュンとしないわけもなく、否応なしに頬が火照った。今日だけは母親じゃなくて、女として過ごしてもいいかな。
真実を打ち明けるのは、今日の終わりにしよう。もし受け入れてもらえなかったら、一日気まずいことになりそうだから。
とりあえず久々のデートを楽しもうと、難しいことは考えず心地いいドライブをしながら向かうのは、リゾートタウンでもある葉山。湘南から少し離れた海の街で、落ち着いた雰囲気がとても好きな場所だ。
ここを選んだ理由はそれだけでなく、婚約者だった頃にふたりで来たことがあったから。同じ場所に来れば、固く閉じた嘉月さんの記憶の蓋が少しだけでも動くかもしれないと、わずかな希望に賭けて。
一時間ほどかけて葉山に到着し、ショッピングプラザ周辺に差しかかると、さすがはゴールデンウィークだと納得するくらいに混雑していた。
前回ここへ来たのは四月で、連休ではなかったし海水浴の時期でもなかったから、ここまで人はいなかったと思う。
「クルージングランチ、予約できなくて残念だったな」
行き交う観光客を横目に嘉月さんがそう言ったので、私は慌てて首を横に振る。



