翌週の火曜日の午後五時、普段より早く仕事を終えた俺はヱモリへと向かっている。
昨日、初めて都さんから〝渡したいものがあるんですけど、会えますか?〟という連絡をもらった。まるでこれが初恋かのように騒ぐ胸をひた隠しにして、さっそく今日会うことにしたのだ。
一体なにを渡すつもりなのか見当もつかないが、彼女の顔を見られるだけで嬉しい。
ヱモリの入口付近までやってくると、ゴミを片づけるコックコート姿の女性と目が合った。パティシエらしき彼女は、数年前に都さんは辞めたと教えてくれた人だ。
彼女は「あっ、こんにちは」と声をかけ、口角を上げて俺に近づいてくる。
「都ちゃんならちょうど上がったところなので、もう少し待っていてください」
どうやら俺が都さんに会いに来たことを知っているらしい。丁寧に教えてくれる彼女に「ありがとう」と軽く頭を下げた。
彼女は眼鏡の蝶番の辺りを押し上げ、なんだか改まった様子で話し出す。
「私、源といいます。都ちゃんからはある程度事情を聞いていて、ものすごくおこがましいんですが心配で……都ちゃんのこと、本気なんですよね?」



