「嫌い合って別れたわけじゃなさそうだと、父親の話をしている時の彼女を見れば想像がつく。そんなに大切な人がいると思うと、気がおかしくなりそうだよ。自分がこんなに嫉妬深い男だったとはね」
もどかしくて胸を掻きむしりたくなる自分に、自嘲的な笑みをこぼす。朝陽はなにかを言いたそうにしていたが、飲み込むように開きかけた口を閉じた。
俺は本当の父親を越えられないかもしれない。だとしても、ずっと抱いていた想いには抗えず「でも」と続ける。
「彼女にもう一度会えたら、その時は絶対に手に入れたいと思っていたんだ。その気持ちは変わらない。子供ごと愛してみせるよ」
強い意志を言葉にする俺を、朝陽は目を開いてまっすぐ見つめる。そしてふっと表情を緩め、「かづ兄がそこまで言うなら、俺は応援するしかないね」と穏やかに言った。
ところが、彼はなぜか照れたように目を逸らし、ポリポリと頭を掻く。
「ていうか、なんか聞いてるこっちが恥ずかしいんだけど……。『甘い言葉は他の人に聞かせるものじゃない』とか言ってたのになぁ」
「言ったか? そんなこと」
覚えがなくて首をかしげる俺に、朝陽は意味深にクスッと笑った。



