駅でのエピソードは朝陽も知っているので、笑いながら思い出したように言う。
「そういえば、ゲーム事業部では〝最強極道3〟を制作中なんだって?」
「そうなんですよ! 副社長の極道モードがいつ飛び出すかとわくわくしてます」
「無意識なんだが気をつけないとな……この間も〝ハンコ〟のことを〝エンコ〟と言って、社員を怯えさえてしまったし」
俺が眉根を寄せて反省しているにもかかわらず、ふたりは噴き出して大笑いした。こうやって笑ってくれるならいいのだが、多くの社員は引いてしまうから本当に注意しなければ。
鈴加さんは呼吸を整え、やっとコーヒーをデスクに置く。
「副社長、お待たせしました。どうぞ」
「ありがとう。いつもすまない」
「いいんです。私が好きでしていることですから」
こうやって彼女ににこりと微笑まれたら、男たちはあっさり落ちてしまいそうだな。俺が癒やされるのはあの子だけだが……と頭の片隅で思いながら、さっそくコーヒーをいただく。
「また機会があれば、今度はヱモリのコーヒーを買ってきてもらいたい。やっぱりあそこのブルーマウンテンが一番口に合うんだ」



