俺が会議や打ち合わせで会社から出られず、かつ鈴加さんが外出する用がある時に、彼女は気を利かせてコーヒーを買ってきてくれるのだ。
朝陽が俺の異母兄弟だというのも知っていて、こうして会う時があるので気心知れた仲になっている。鈴加さんは三十歳だが、童顔だし敬語を使うので朝陽より年上のようには感じない。
コーヒーを買ってくるという彼女の厚意に、朝陽は笑って首を横に振る。
「高嶺の花の鈴加さんに差し入れなんてされたら、男性社員に目の敵にされちゃいますよ」
「もう、口がうまいんだから。でも万が一そんなことがあったら、副社長に頼んでカタに嵌めてもらっちゃいましょう」
突然物騒なことを笑顔で言い出す鈴加さんに、俺は真顔で「こらこらこら」とツッコんだ。
実は数年前、駅で男たちに絡まれていたところを助けた女性がこの鈴加さんだったのだ。助けに入るまで気がつかず、後でしっかり顔を見て驚いた覚えがある。
その時、つい出てしまった極道らしい言葉で男たちを撃退したのが面白かったのか、彼女は時々笑いのネタにしてくる。こういうお茶目な部分があって容姿も可愛いとなれば、男性社員に人気なのは当然だろう。



