身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 でも、これは自分が欲しくてやったわけじゃない。微妙に表情が違うし、ピザーマンが好きなあの子にあげたらきっと喜ぶに違いない。子供には質より量だと、誰かが言っていた気がするし。

 愛しい母子ふたりの姿を思い浮かべて表情を緩ませていると、ドアがノックされ「失礼します」と小柄な女性が入ってきた。

 ふわっとしたボブの髪にぱっちりした瞳の彼女は、俺の秘書の鈴加(すずか)さんだ。

 以前は予定なども一度見れば記憶できていたので秘書はつけていなかったのだが、脳を損傷して以来、記憶力は人並みに低下したと感じている。業務も大変になって助けが必要になり、彼女を秘書にすることにした。

 これを提案してきたのは社長である伯父だ。鈴加さんはずっと社長秘書を務めていて、若いのに有能な子だからとあてがわれたのである。

 彼女は、応接用のソファに座る朝陽を見て目を丸くする。


「霜平さん! いらっしゃってたんですか」
「お邪魔してまーす。すみません、いつもアポなしで来ちゃって」
「本当に。先に言っておいてくれれば霜平さんの分も買ってくるのに」


 鈴加さんは、片手に持ったコーヒーの紙カップをひょいと持ち上げてそう言った。