肩の力が抜けてしおしおと姿勢を戻すと、嘉月さんの眼差しが真剣なものになっていると気づく。
「都さん。あの頃俺たちがもっと会話をしていたなら、全部教えてほしい」
今の私の反応でなにかあると察したのか、そんなふうに頼まれてしまい動揺する。
会話をしていたどころじゃない。私たちは婚約者になって、愛し合っていた。しかし、まだそれを明かすほどの勇気はなく、目を泳がせてごまかす。
「特別なことは、なにも……」
「じゃあ、なぜあの時泣いたんだ?」
間髪を容れずに問いかけられ、ぐっと喉が詰まる。どうしよう、うまい言い訳がなにも思い浮かばない。
「それは……」と言うだけで俯いて口ごもっていると、彼の小さなため息が聞こえてきた。不機嫌にさせただろうかと思ったものの、彼は思案するように視線を宙にさ迷わせている。
「この間都さんと会ってから……いや、もっと言えば病院に来てくれた時から、なにかが引っかかるような感覚がずっとしているんだ。この正体がなんなのかを突き止めたい」
記憶がなくても、私とのことでなにか感じるものがあるらしい。複雑な心境で鼓動が乱れる。



