身ごもり婚約破棄したはずが、パパになった敏腕副社長に溺愛されました


 緊張しながらブルーマウンテンを淹れ、嘉月さんが座る定位置に運ぶ。「お待たせしました」と普段通りにカップをテーブルに置くと、彼はバッグから取り出したなにかを見せてきた。

 子供向けの絵が描かれた手提げ袋。さらにその中に入っていたのは、数種類のチュウカマンの小さなキーホルダーだ。


「これ、昴くんに」
「えっ、いいんですか? ありがとうございます! 絶対喜びます」


 ありがたくいただこうとすると、彼は「都さんにはこれかな」と言って、その中のひとつを摘まんで取り出す。


「こしあんマン、昔好きだったんだろう」


 茶化すように口にされたひと言で、私は目を見開いた。

 それって、初めて会話した時に私が言ったことだよね? もしかして……!


「思い出したんですか!?」


 前のめりになる私に、嘉月さんは少し驚いた様子で目をしばたたかせて口を開く。


「君とチュウカマンの話をしたことは覚えている。記憶がないのはそれ以降だ」


 ……ああ、なんだ、そういうことか。一瞬期待してしまった。

 でも、初めての会話を覚えてくれていたなんて、ちょっと嬉しい。それすらも失くしたものだとばかり思っていたから。