昴の「ぴじゃーまん、たべる……」という不満げな声が聞こえてきたので、私は慌てて席に戻って彼を座らせる。
大きく口を開けてかぶりつく幸せそうなわが子をぼんやり眺めていると、ほどなくして里実さんも戻ってきた。
彼女は「お待たせ~」と言い、子供も知っている有名なゲームのキャラをイメージしたジュースをテーブルに置く。
「こういうジュースって、プラスチックのカップにただシールが貼ってあるだけでぼったくられてる感半端ないのに、つい買っちゃうのよね~。って、どうしたの? ぼーっとして」
いつもなら共感しまくっているところだが、なんの反応もできずにいる私を里実さんが不思議そうに覗き込む。
「どうしよう……会ってしまった……」
「えっなに、芸能人?」
「……〝青山さん〟に」
ぱちぱちと瞬きした彼女は、次の瞬間「えぇぇっ!?」と驚愕の声を上げた。
再会しただけならまだしも、これっきりにはならなそうで戸惑ってしまう。
彼からしてみれば私はワケありのシングルマザー。会おうとする理由がわからず、私の鼓動はしばらく乱れたままだった。



