「お久しぶりです。まさか、覚えているとは……」
「忘れるわけない。突然女性に泣かれたのは初めてだったから」
ちょっぴりいたずらっぽく言われ、そういえばそうだったと思い出して恥ずかしくなった。頬を熱くして俯く私に、耳に馴染む低い声が届く。
「俺は青來嘉月。君の名前を聞いてもいいか?」
二度目の自己紹介……してもいいものかと戸惑いながらも、私の口は従順に動く。
「都です。明河都」
「都さん、か」
噛みしめるように繰り返した嘉月さんは、ふっと柔らかな笑みを浮かべる。
「やっと名前で呼べた」
──また、あの時と同じ言葉。愛されていた日々が一気に蘇ってきて、じわっと熱いものが瞳に込み上げた。
涙腺が緩んでいることがバレないよう目を逸らすと、彼はおもむろにしゃがんで今度は昴をじっと見つめる。
ああ、どうしよう……子供の存在を知られてしまった。でもこの状況で逃げ出すのは不自然すぎるし、普通にするしかないよね。



