夫の一番にはなれない



「うわー! 漫画みたい!」

「きゃー、ドラマチックー!」


涼ちゃんもヒロちゃんも、目をキラキラさせて聞き入っている。

來の作った“嘘半分、真実半分”の物語に、わたしもつい引き込まれてしまいそうになる。


本当にそうだったら、どれだけ幸せだっただろう。

でも、現実は――わたしたちは「一年限定」の契約夫婦だ。


「付き合ってどれくらいでプロポーズしたの?」

「ええっと……2ヶ月くらいですかね。奈那子の笑顔に負けました」

「ひゃあ! ごちそうさまー!」


ヒロちゃんは椅子の背にもたれて、胸をおさえて大げさに倒れ込むフリをした。


來はそれを見て、少しだけ照れたように笑う。

その笑顔が、あまりに自然で、あまりに“夫らしくて”、わたしの心はどんどん揺らいでいった。


“これは演技だ”“これは偽りだ”


そう自分に言い聞かせるのに、どうしても素直に受け止めてしまう。

この時間、この会話、來の優しい眼差し。


全部、本物のように感じてしまうのは、わたしがもう本当に來のことを――