夫の一番にはなれない



***

ヒロちゃんと涼ちゃんが来てからというもの、わが家の空気は一気に明るくなった。

いや、正確には賑やかすぎるくらいだった。


「この唐揚げ、めっちゃ美味しい! 來さんが作ったの?」

「はい、まぁ……」

「えー! 料理もできるとか、完璧すぎじゃない! ねぇ奈那子、何それ、勝ち組じゃん!」

「そんな大げさな……」


わたしは笑ってごまかしたけれど、來はすっとわたしの方を見て、わずかに笑った。

その微笑みに、胸がチクリとする。

この時間がずっと続けばいいのに。そんなふうに思ってしまう。


そして、ひとしきり料理を味わったあとは――やっぱり来たか、という話題に。


「でさでさ! 奈那子、どうやって來さんと出会ったの? やっぱり職場恋愛? それとも運命的な出会いとか?」


この質問が来ることは分かっていた。

でも、どう答えればいいのかは分からなかった。


「えっと、それは……」


言い淀むわたしに代わって、來がスッと口を開いた。


「俺の一目惚れです。元カノにフラれた直後に、たまたま奈那子と出会って――その瞬間、心を撃ち抜かれました」