夫の一番にはなれない



そして約束の18時。

「ピンポーン」という音とともに、玄関のドアを開けると、久しぶりの顔ぶれがそこに並んでいた。


「やっほー! おじゃましまーす! 奈那子ー!」

「はじめまして。涼子です。お世話になります」

「ヒロでーす♡ 來さんに会えるの楽しみにしてましたー」


リビングに案内すると、ヒロちゃんのテンションはすでに最高潮だった。


來はというと――玄関先で硬直していた。

視線はまっすぐヒロちゃんをとらえたまま、無言のまま動かない。


わたしはその様子を見て、遅すぎたと反省した。

そうだ――來にはヒロちゃんの“本当の正体”を、まだ伝えていなかったのだ。


來とほぼ同じくらいの身長。肩幅もあって、ちょっとした仕草に“男らしさ”を残すヒロちゃん。

でも心は昔から、わたしよりずっと乙女だった。


「……あの、來さん? 固まってるけど大丈夫?」

「……あ、あぁ。ごめん、びっくりして……」


ヒロちゃんは全開の笑顔で、來の顔をじーっと見つめたかと思うと――


「わー♡ 旦那さん、噂どおりイケメンですねー! いただきますっ!」


……もう何から突っ込めばいいのかわからなかった。