夫の一番にはなれない



「ヒロちゃんのこと。あの子、昔からイケメンが大好物なの。來のこと、たぶんドンピシャで好みのタイプだと思う」

「へぇ、イケメン好きな友達か……」


來は面白がるように口元をゆるめた。わたしのほうがむしろ変に緊張していたのかもしれない。


「ってことは、奈那子は俺のことイケメンって思ってるってこと?」

「ち、違……そういうわけじゃないけど……生徒たちも言ってたし、まあ、一般的に見れば……」

「うん、光栄だな。奈那子にそう言ってもらえるなんて」


そう言ってご満悦な表情の來に、わたしは少し顔を赤らめた。

いつもより少しだけやりとりが軽やかに感じられた。


だけど、わたしの注意が少し効いたのか、來はふと真顔に戻ると、静かにこうつぶやいた。


「心配しなくても……俺は、浮気しないよ」


その言葉に、胸がきゅっと締めつけられた。

來の元カノのこと――つまり、わたしの元カレと浮気していた彼女のことが頭をよぎる。

もしかして、來はあの過去を気にして、こんなふうにわたしを安心させようとしてくれているんだろうか?


來の言葉が、わたしの中に静かに、でも確かに響いていた。