夫の一番にはなれない



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田淵くんの件がまだ完全に解決していない中、わたしたちの生活にもひとつのイベントが近づいていた。

それは、週末に高校時代の友人――涼ちゃんとヒロちゃん――が、我が家に遊びに来ることになっていたことだ。


來にその話をすると、嫌な顔ひとつせず「夕飯に何かごちそうを作ろうか」と言ってくれた。

さらに、「買い物も俺が行くよ」と、自ら動いてくれる。

ここまで自然に“夫”として振る舞ってくれる來の姿に、思わず本当の夫婦になったみたいだと錯覚してしまう。


「來、ありがとう。こんなにたくさん買ってきてくれて」

「いや、これくらいは全然。量、足りそう?」

「うん、十分だよ。2人とも、きっとすごく喜ぶと思う」


來には、わたしの友人たちの名前も伝えてある。

涼子――通称・涼ちゃん。しっかり者でお姉さん肌。

そして、ヒロコ――通称・ヒロちゃん。恋多き、でも憎めない明るい性格の持ち主。


わたしは少しだけ、來に注意を促しておこうと思った。


「ねえ、來。今から来る友達のことで……ちょっと気をつけてね」

「ん? 何を?」