たとえ正面から介入はできなくても、田淵くんが「自分の思いを話せる」居場所くらいは、学校の中にあってもいいはずだ。
きっと、担任の小野寺先生は近いうちに三者面談を設定することになる。
そこで改めて、田淵くんの想いを、そしてお母さんの不安を、正面から話し合うことになるだろう。
その場で何ができるのか。
どこまで言葉が届くのかは分からない。
でも、少なくとも教師としてできることはある。
“親と子の懸け橋になること。”
それが、わたしたちの務めであり、願いでもあるのだから。
静まり返った職員室の中、わたしのその一言に、同じような無力感と決意を抱えた先生たちが、静かにうなずいた。



