予想していたよりも淡々とした反応だった。
少し拍子抜けしつつも、もしかして本当に気にしてなかったのかと、わたしは一瞬安堵しかけた。
……けれど。
「はぁ……」
助手席のわたしにもはっきり聞こえるほど大きなため息。
その一瞬で、また胸がざわついた。
何を考えているのか――分からない。
來の顔は窓の外の光の反射で影が落ち、表情はよく見えない。
「あ、來……」
名前を呼ぼうとしたその瞬間、わたしのスマホが鳴った。
LINE通話の着信音。表示された名前に、わたしはすぐに応じた。
「もしもし?」
『奈那子ー!今日来てくれればよかったのにー!』
酔いの回った陽気な声。電話の主は、高校時代の親友、涼子だった。
そうだ。
今日は、もう一人の友人・ヒロちゃんと久しぶりに会う約束をしていた日だった。
「涼ちゃん……今飲んでるの?」
『そーだよー!でね、奈那子んち遊びに行こうって話になってさー』
「家に?」
『そそ。旦那さんにも会ってみたいってヒロコが言い出してね。いいでしょー?』
ちらりと來の方を見ると、無表情なまま目をそらす氣配があった。
何か言いたげな氣配を感じながらも、わたしは努めて明るく返した。



