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「でも、田淵くん、無事に見つかってよかったね」

「……ああ」


帰り道の車内。

夜の街を照らす街灯の光が、車のフロントガラスにちらちらと映り込む。


助手席に座るわたしは、明るい話題で雰囲気を変えようと口を開いたけれど、來はどこか不機嫌そうな返事を返しただけだった。


「…………」

「…………」


無言の空気が、じわじわと車内に広がっていく。

田淵くんのお母さんへの態度が気に入らなかったのかと思ったけれど、來の苛立ちは、それとは違う何かのように感じられた。

わたしに対して、何か思うことがあるのかもしれない。そんな気がしてならなかった。


「あの……」


言いかけたところで、來は何も言わず運転に集中していた。

信号が赤に変わり、車が止まった時、ようやく來が口を開いた。


「あのさ」

「う、うん?なに?」

「さっき、桜丘の先生と何話してたの?」


唐突な質問に、ドキッとした。

やっぱり――來は気にしていたんだ。


「えっと……ほら、前に言ってたでしょ?養護教諭の件。知り合いに声かけてたんだけど、誰も引き受けてくれそうになくて。だから、そのお詫びをしてただけだよ」

「……そうか」