「ところで……以前、お話ししていた件なんですけど……養護教諭の件、どうなりましたか?」
「えっと……あれから何人かには声かけてみたんですが、やはり現職の方はみんな継続希望で……」
「なるほど……いえ、こちらこそ急ぎすぎてしまって。携帯番号を直接お渡ししたのが良くなかったかなと思いまして。やっぱり学校の方に連絡いただく形がいいかと」
「……ありがとうございます。お気遣い感謝します」
わたしは思わず、自然と微笑んでいた。
谷口先生の優しさに、心のどこかがじんわりと温かくなる。
と、そのとき。
「田淵!」
玄関のドアが勢いよく開かれ、続々と戻ってきた先生方の中に、來の姿を見つけた。
來は田淵くんの無事を確認して、明らかにほっとした顔を浮かべる。
けれど、すぐに視線がわたしと――その隣に立つ谷口先生へと向いた瞬間、表情がほんのわずかに曇った。
「來……?」
「……今の先生、桜丘高校の?」
「うん。谷口先生って言って、あのときの食事会の……」
「……ああ、あのときの」



