夫の一番にはなれない



事情を説明すると、谷口先生が言った。


「……もしかして、その生徒、くせっ毛でつり目の男の子ですか?」

「はい。たぶん田淵くんです」

「よかった……。実は、こちらでも家出の生徒を保護したのですが、隣にいた男子が名乗らず、警戒していたんです」

「じゃあ、間違いないと思います。ありがとうございます、すぐに迎えに――」

「いえ、ついでですから、こちらからお送りします」


連絡を切ったとき、安心のあまり、膝が少しだけ震えた。


――よかった。

ようやく、生徒の無事が確認されたのだ。


わたしは來にメッセージを送り、校内の先生たちにも連絡を入れた。

その夜、雨の音はいつもより静かに感じられた。