夫の一番にはなれない



時計を見ると、すでに19時を回っていた。

じわじわと不安が広がっていく。


そんな時、保健室の電話が鳴った。


「はい、保健室――」

「奈那子先生?あのさ、俺、ちょっと思い出したことがあって」


電話の相手は、先ほど電話した宮部くんだった。


「田淵、もしかしたら桜丘高校の生徒と一緒にいるかもしれない」

「桜丘高校……?」


話を聞くと、田淵くんは中学時代に桜丘の生徒とよくつるんでおり、最近もその生徒と街で会っていたのを宮部くんが思い出したという。


「ありがとう、宮部くん。連絡してくれて助かった」


わたしはすぐに桜丘高校の電話番号を調べてもらい、連絡を取った。

この時間じゃ、もう職員は誰も残っていないかもしれない。

そう思いながらも電話をかけると――


「はい、桜丘高校です」

「あ、星坂高校の滝川と申します。そちらの先生に、谷口先生という方はいらっしゃいますか?」

「あっ、星坂の滝川先生!?この前ご一緒した谷口です!」


なんという偶然。

あの時の交流会で名刺をもらった、あの谷口先生が電話口に出たのだ。