夫の一番にはなれない



「滝川先生も気になる? ファーストキス、どんなのだったか聞きたいんじゃない?」

「別に……聞いたところでどうってことないけどな」


なのに、來はその場を離れない。


どうしてわざわざ中に入ってきて、話を続けようとするの――? 

そんな疑問が胸に広がる。


やがて、生徒たちは「お母さんに怒られる前に帰るー」と笑いながら保健室をあとにした。

台風のようにやって来て、嵐のように去っていった2人。


でもその後に残った空気の重たさに、わたしの心臓は静かに早鐘を打ち始めていた。


「…………」

「…………」


保健室の中に2人きり。

沈黙がやけに長く感じる。


やがてその沈黙を破ったのは、來の方だった。


「あのさ、奈那子」

「なに?」

「衝撃的なファーストキスって、どんなだった?」

「えっ」


その質問の意味が、すぐには理解できなかった。


「いや、その……どんなのだったのか、上書きしようと思ってさ」