夫の一番にはなれない



***

「奈那子先生、その話、滝川先生が聞いたらヤキモチ妬かれちゃうかもよ?」


千絵さんの茶化すような言葉に、「そんなわけないでしょ」と笑って返そうとした瞬間――


「あ、噂をすれば! 滝川先生だ!」


保健室の扉の向こう、職員室へ向かう來の姿が見えた。

ジャージ姿のまま、少し疲れているようにも見える。


「滝川せんせー!今ねー、奈那子先生の初カレとファーストキスの話聞いてたのー!」

「ちょっ、千絵さん、それは――!」


止める間もなく大声で話を投げかける彼女に、來が一瞬立ち止まり、こちらを見た。


そのまま素通りしていくかと思ったけれど、來はなぜかそのまま保健室へ入ってきた。


「……初カレ?」


低く、穏やかだけど、どこか探るような声音。

生徒の前だからだろうか。

普段より演技じみているようにも思える。


「そう!しかもすごく衝撃的なファーストキスだったんだって!」


千絵さんの暴露が止まらない。


「……へえ。衝撃的、ね」


來がこちらをじっと見つめてくる。

その視線に、わたしは目を逸らすしかなかった。