「昼間にね、大樹くんと幸さんの話を聞いて、思ったことがあるんだけど……」
來は箸を止めて、わたしを見た。
目は合わなかったけど、聞いてくれる姿勢は感じられた。
「もしかして……來もそうだったの? わたしが大変だと思って、いままで“作らなくていい”って……」
來は言葉に詰まったように唐揚げを口に運んだ。
そして、しばらく噛んだあとで――ぽつりと、
「……いや、別に」
それだけだった。
だけど、十分だった。
來が、わたしに負担をかけたくなくて、ずっと気を遣ってくれていたんだということが伝わった。
「ありがとう、來」
「……そんなたいしたことじゃない。お前が無理するの嫌だっただけだし」
その言葉が、どれだけわたしを救ったか。
わたしたちは本当の夫婦ではないけど――
でも、“本当の思いやり”を受け取った気がして、胸が温かくなった。
「今日は早く帰ってきたんだね」
「ああ、今日は部活もないし、仕事も片付いたからな」
それから、わたしたちは穏やかに食卓を囲んだ。
來の話すペースも少しずつ柔らかくなっていて、
わたしも自然に笑顔が増えていた。



