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來から「手料理が食べたい」なんて言われるとは思ってもみなかった。
これまであれほど頑なに断っていた彼が、まるでこちらに歩み寄るような言葉を口にするなんて。
そのひと言が、こんなに胸を熱くさせるなんて、予想もしていなかった。
嬉しかった。素直に。
少しは、わたしに甘えてくれているのかな――そう思えたから。
もしかして、來の中でも何かが変わってきているんじゃないか。
あの、仮面夫婦というルールの下で抑えていた本心が、少しだけ溢れてきているんじゃないか。
そう思いたかった。思い込みかもしれないけど、それでも。
そして――これはチャンスだとも思った。
來が少しでも「夫婦としての生活」に可能性を感じてくれているのなら。
わたしがこのタイミングで「夫婦を続けませんか?」って提案したら、
もしかしたら、彼も――受け入れてくれるかもしれない。
そんな期待と不安がないまぜになって、
彼の帰宅を待つ時間は、これまでで一番長く感じられた。
夕飯の支度は思っていたより早く終わったのに、
それからが落ち着かなくて、テレビをつけても、音だけが空回りしていた。
――「ただいま」



