あのあと、一度は別れた。でも、すぐに再会した。
偶然、カフェで。
いや、“偶然”じゃなかったのかもしれない。俺はあの場所に、彼女を探しに行っていたのかもしれない。
再会したときには、もう決めていた。
――この人と、もっと一緒にいたい。
でも、正直な気持ちを伝えるのが怖かった。
俺のこの想いは、一方的なものかもしれない。
奈那子はまだ、元カレを引きずっているかもしれない。
だから俺は、わざと「自分も元カノを忘れられない」と言った。
そうすれば、お互い様ということで、少しは近づける気がした。
姑息だった。
でも、どうしても彼女を失いたくなかった。
だから“結婚”を提案した。
「彼らに結婚を見せつけてやろう」とでも言えば、冗談にできると思った。
俺のわがままだった。
そして、奈那子はそれを受け入れてくれた。
心のどこかで、奈那子も俺と同じように傷を抱えている気がしていた。
でも、それでもいい。
形式でも、条件付きでも、一緒にいられるなら――
けれど、その“ルール”が、今になって足かせになっている。



