奈那子も気づいたのだろう。
少しだけ目を伏せて、小さく頷いている。
まるで、自分たちのことを見ているようで、胸が少し締めつけられた。
「松島、こいつは不器用だから、なんでも正直に言えるタイプじゃない。だから……まあ、その辺、理解してやれ」
「ちょっ、滝川先生! 何言ってんすか!」
顔を赤くしながら反論してくるが、俺の目を一度にらんだだけで引っ込むあたり、やっぱり素直だ。
「まさか……大樹。わたしがケガすると思って、“作らなくていい”って言ってたの?」
「……まあ……そう、だよ」
絞り出すようなその声に、隣の幸は目を丸くして――そして、ゆっくりと笑った。
ああ、この笑顔を守るために、彼はずっと言葉を呑み込んできたのだろう。
その姿は――まるで、かつての俺だった。
俺も昔、人に何かをしてもらうことに、慣れていなかった。
「俺のために」と言われれば言われるほど、申し訳なさと気後れの感情が先に立って、拒絶してしまった。
結局それで、距離を置かれたことがある。
そうならないようにと気を遣ったつもりが、ただの“壁”になっていた。
きっと、大樹もそうなのだ。



