でも、もしわたしが今の学校をやめることになって転職の道を考えたときに、その先生とのつながりは一つの方法かもしれないと思った。

だから、はっきりとは断れなかったんだと思う。


「ごめん……」

「あ、いや……俺もきつく言いすぎた。悪い」


確かに口調はいつもよりもきつかったと思う。


でも、わたしは少しうれしかった。

だって、來がヤキモチを妬いてくれているのかなと思ってしまったから。


でも、「ヤキモチ妬いてくれたの?」とは聞かない。


聞く勇気がないのも理由の一つ。

だけど、本当は來がヤキモチを妬いてくれたかもしれないと、少しいい気分に浸りたかっただけかもしれない。



「ねえ、來。ちょっと寄り道していかない?三角公園からの夜景がすごくきれいなんだよ」

「ああ、いいな」


來とデートをしている気分にもなった。

わたしたちは偽りの関係だけれど、たまには妻としての気分を味わってもいいよね?


今だけ來の本当の奥さんになった気分になったわたしは、もう一度考え直そうとした。

一度、來と真剣に話をしてみようと――