夫の一番にはなれない



――似ている。

まるで、わたしと來のやりとりを見ているようだった。


「ね、奈那子先生、これってどっちが悪いと思う?」

「うーん……幸さんが頑張ったのは伝わってくるよ。でも、大樹くんが“いらない”って言ったのも本心だったのかもしれない」

「……そりゃ、まあ……でも、そんな顔しなくてもよくない?」


わたしは、來のあの顔を思い出した。


“受け取る準備ができていない人”に、何かを差し出すのは、やっぱり難しい。

だけど、それでも――言葉にしないと、伝わらない。


「ねえ、大樹くん。もしかして、うまく言葉にできなかっただけなんじゃない?」

「……かも」

「次は、ちゃんと理由を話してみよう?幸さんも、気持ちを押しつけすぎないようにね」


2人は、顔を見合わせて、少しだけ照れくさそうに笑った。

「じゃあ、仲直りしとく?」と問いかけたら、「まあね」と同時に返事が返ってきた。


2人が保健室を後にしたあと、來がぽつりとつぶやいた。