***
來の変化がうれしくないと言えば、それは嘘になる。
彼の言動が、少しずつ――ほんの少しずつ、わたしの方に向いているように感じていた。
たとえば、「帰り遅くなるよ」とか「プリン買っておいたから」なんて、以前の來からは考えられない一言が日常に増えていった。
だから、わたしも思い切って言ってみたのだ。
「ねえ、來。明日からお弁当、作ろうか?」
ほんの小さな勇気だった。
來にしてもらってばかりで、わたしも何かしたいと思った。
それに、今の來なら――受け取ってくれる気がしていた。
だけど。
「……いや、いい」
眉間にしわを寄せた來の顔が、瞬時にわたしの心を凍らせた。
「いつも通り、学食かコンビニで済ませるから」
その言葉に、わたしは何も返せなかった。
期待したからこそ、反動が大きすぎた。
わたしはただ、彼のために何かしたかっただけ。
來がわたしに少しずつ心を開いてくれている気がしたから、少しだけ、踏み出してみたかっただけなのに――
だけど、來はまた距離を置いた。



