夫の一番にはなれない



***

來の変化がうれしくないと言えば、それは嘘になる。

彼の言動が、少しずつ――ほんの少しずつ、わたしの方に向いているように感じていた。


たとえば、「帰り遅くなるよ」とか「プリン買っておいたから」なんて、以前の來からは考えられない一言が日常に増えていった。

だから、わたしも思い切って言ってみたのだ。


「ねえ、來。明日からお弁当、作ろうか?」


ほんの小さな勇気だった。

來にしてもらってばかりで、わたしも何かしたいと思った。

それに、今の來なら――受け取ってくれる気がしていた。


だけど。


「……いや、いい」


眉間にしわを寄せた來の顔が、瞬時にわたしの心を凍らせた。


「いつも通り、学食かコンビニで済ませるから」


その言葉に、わたしは何も返せなかった。

期待したからこそ、反動が大きすぎた。


わたしはただ、彼のために何かしたかっただけ。

來がわたしに少しずつ心を開いてくれている気がしたから、少しだけ、踏み出してみたかっただけなのに――


だけど、來はまた距離を置いた。