夫の一番にはなれない



「この名刺を手放す時が、來と本当の関係になれる時なんだろうな」


でも、わたしにはまだ、その勇気が持てなかった。


この夜、來から「どっちの店がいい?」とレストラン候補が送られてきた。


思わず笑ってしまった。


「今までこんなやり取り、なかったのに」


“ただの外食”かもしれない。

“契約の最後の節目”かもしれない。


それでも、わたしは行きたいと思った。


來に、ちゃんと向き合って話をしたい。

この一年分の“ありがとう”と、“できればこれからも”という想いを――


伝える準備を、少しずつ始めていた。