「ごめん。でも……今の学校を離れることになったときのために、って思っちゃって」


それが、わたしの本音だった。

離婚した後、自分の足で立っていくために。

何か“次”を意識してしまう自分がいた。


「……そうか。ごめん。ちょっと言い方きつかったな」

「ううん、來の気持ちも分かるから」


わたしの中で、來が少しでも“わたしを気にしている”と思いたくて。

ヤキモチを妬いてくれたのかも――なんて、期待してしまっていた。


「ねえ、來。ちょっと寄り道しない? 三角公園の夜景、すごく綺麗なんだ」

「……いいな。行こうか」


來と並んで歩いた夜の道。

わたしたちは今、たぶん――仮初めの夫婦じゃない。

本物にはなれなくても、その“予感”くらいは、見せてもいいんじゃないか。


夜景の先で、來とわたしが向き合ったとき、

わたしはようやくひとつの決心を抱いた。


――今度こそ、來と本音で話してみよう。

逃げずに、わたしの言葉で、わたしの気持ちを伝えてみよう。


次に来るのが、関係の終わりではなく、始まりであることを願って。