「いつから? いつから浮気してたの?」

「……一年前」


耳を疑った。

そんなに前から?

あのとき、もうすでに裏切られていたの?


「でも、その後は何もなかったんだ。2ヶ月前に再会して……それから」

「付き合ってたの? 2股ってこと?」

「いや、そんなつもりじゃ……」


わたしは、彼を“誠実な人”だと思っていた。

正直で、裏表がなくて、そんなところが好きだった。


だから、浮気という言葉を信じられなかった。

でも、現実には彼の心はもうわたしから離れていた。


「ななちゃんには幸せになってほしい」


その一言が、なにより残酷だった。

裏切った本人が、幸せを願うなんて。


「だから……俺たち、結婚はしない。ななちゃんが幸せになるまでは」

「“俺たち”って?」


目の前で別れ話をしながら、勝手に未来のことまで決めようとしている。


「実は……彼女もここに来てて」


なんて無神経。

その瞬間、彼の視線の先――つまり、わたしの背後にいるその女性の正体に気づいた。


セリフがシンクロしていた理由も、席の配置も、すべてが合点がいった。