「今日はお弁当なんですね。いつもは奈那子先生が作ってくれてるんでしょ?って聞いたの。そしたら、“そうですね。今日はお互い楽しようと思ってお弁当です”って言ってたわよ」
「あ……」
「奈那子先生たちまだ結婚して1年だものね。仲良くて羨ましいわあ」
職員室でわたしが愛想笑いをした回数は、数えきれないと思う。
今だって、何も返事をできずにただ笑っていただけだった。
気にしないようにと、何も考えないようにしている。
わたしたちはみんなから羨ましがられる仲良し夫婦。
“そうですね。今日はお互い楽しようと思ってお弁当です”
と、來が返事をした時も仲良し夫婦を演じたはずだ。
だから、わたしも外では仲の良い夫婦を演じなければいけない。
でも、本当にこんなことを続けていて大丈夫なの?
もうすぐわたしたちは離婚をするというのに。
これまで通り仲の良い夫婦を演じていたら、さすがに周りが疑わないだろうか。
それに、わたしには離婚してからの懸念が他にもあった。
「奈那子ちゃーん。やっほー」
「いえーい、奈那子ちゃーん」