保健室に戻ると、そこには早川先生が待っていた。
この時間に彼女がいるのは珍しい。
「あ、奈那子先生、やっと戻った。ちょっとお願いがあるの」
「どうしたんですか?」
時計を見るともう18時を過ぎていた。
生徒が来る時間帯でもないし、何か特別な用事でもあるのだろうか。
「今度の土曜日の夜、空いてる?」
「夜ですか?今のところ予定はないですけど……」
普段なら映画の誘いは昼間。だから、夜という指定に少しだけ違和感を覚えた。
「実はね、桜丘高校の先生たちと食事に行くんだけど、一緒に行ってくれない?」
「桜丘って、あの強豪の?」
「そうそう。この前の研修会でちょっと話をしてね」
その名前を聞いて、わたしは少し緊張した。
県内でも有名な学校の先生たちと、どんな会話が交わせるのだろうか。
「もちろん、奈那子先生の映画趣味も知ってるから迷ったんだけど……でも夜しか空いてなくて」
「全然大丈夫です。むしろ、そんな機会めったにないですし」
「ありがとう!それとね……相手の先生2人、男性なの」
「え?」
「だから、來先生にも一応言っておいた方がいいかなって。仲良し夫婦なんだし」



