「……奈那子、一緒に映画見る?」
「うん」
來はリモコンを取って、再生中の映画を巻き戻した。
わたしたちはソファに並んで座ったけれど、ひとり分のスペースが空いている。
まるで、そこに誰かもうひとりいるように。
わたしたちの間には、過去の亡霊が居座っているかのようだった。
画面の中では登場人物たちがドラマを演じている。
でも、わたしたちはそれを並んで見ているだけで、
お互いに何も見えていないような気がした。
――來は、今何を考えているの?
彼の表情を盗み見たけれど、そこに感情は浮かんでいなかった。
1年近く一緒に暮らしているのに、わたしはこの人のことを何も知らない。
けれど今、初めて、知りたいと思った。
この距離を越えて、來という人を、ちゃんと見てみたいと――



