「年取っただけだって」と私が笑うと、全員が「それは違うって~!」と声を揃えて突っ込んだ。
会話は止まることなく続いた。
大学の話、バイトの失敗談、職場での人間関係。
それぞれの場所で、それぞれの時間を過ごしてきたことが、どこか誇らしげで眩しい。
「でさ、來先生って、ちゃんとパパになる自覚あんのかな~?」
早苗が茶化すように言った。
「いやいや、めっちゃ甘やかしそう」
酒井さんがすかさず続ける。
「てか、性別ってもう分かってるんすか? 女の子? 男の子?」
長野が問うと、「來先生、絶対女の子だったらデレデレじゃん」と常盤が笑う。
その瞬間、ちょうど保健室の扉が開いた。
「……お前ら、うるさい」
來が苦笑しながら立っていた。
生徒たちは一斉に「出た、來先生!」と笑い声をあげ、わいわいと囲むように話しかけ始める。
來は少し照れながらも、私に目を向けると、小さく微笑んだ。
私はその目に、あの頃と何も変わらないぬくもりを見つけて、心の奥がじんわりとあたたかくなった。



