一月も終わりに差しかかるころ、校内の空気はどこかせわしなく、寒さの中にもわずかに春の気配が混じっていた。


職員室では、新年度のクラス編成や人事に関する話し合いが頻繁に行われていて、連絡表や会議資料が机の上に重なっていく。


「今年の二年生、バランスどうする?」

「酒井さんのこともあるし、支援体制をちゃんと考えないとね」


そんな声がちらほら聞こえてくる。


私はそのたびに、保健室で静かに息を潜めるようにして春を待っているあの子の顔を思い浮かべていた。


酒井さん。

今では保健室に通うのが当たり前のようになった彼女は、早苗や常盤くん、長野くんとほんのりとした距離感で笑い合えるようになっていた。


でも、来年度――彼女は、学年が変わる。

どのクラスに入るのか。担任は誰になるのか。

また、新たな環境に投げ込まれてしまえば、せっかく築いた居場所が揺らいでしまうかもしれない。