來の手が、私の髪をそっと撫で、唇が額に触れる。

その温もりは、急くことなく、ただ穏やかに、深く染み込んでくるようだった。


「好きだよ」


來の声は、耳元でとても小さくて、それでいて確かだった。


私は何も言わずに、そっとその胸に顔を埋める。


いつもよりも、鼓動がよく聞こえた。

きっと、私の心音も、來に伝わっている。


ふたりの距離が、もうこれ以上近づけないくらい近づいたのに、それでもまだ不安はあって、でも、それでも――


私は、來の背中にそっと手を回す。


「私も、好きだよ」


言葉にした瞬間、少しだけ泣きそうになった。


來がもう一度、今度はゆっくりとキスをした。

まるで、確かめ合うように。

急がず、焦らず、ただお互いを信じるように。


どこまでも静かで、やさしい夜だった。

その夜を、私は、ずっと忘れないと思う。