夫の一番にはなれない



「いいんじゃない?ほどよくて。俺たちらしい」


カフェに入ると、木のぬくもりが心地よい空間が広がっていた。

ふたり並んで窓際の席に座り、來はホットコーヒー、私は季節限定のいちごラテを注文する。


「こうして遠くに来たの、いつ以来だっけ」


來がカップを両手で包みながら、ぽつりと呟いた。


「うーん……高校の修学旅行以来、かな?」


私がそう答えると、來は少しだけ目を丸くした。


「俺たち、全然遊んでこなかったんだな」

「うん。でも、今こうして来られてよかった」


コーヒーの湯気の向こうで、來が柔らかく微笑む。

普段、学校では見せないその表情が、たまらなく愛おしかった。


「夫婦になった実感、こういうときに湧いてくるな」

「……私も」