そうして彼女が連れてきたのが、噂の“問題児コンビ”、長野くんと常盤くんだった。

保健室にはほぼ来ないけれど、名前はよく聞いている――というか、遅刻常習者としてすっかり覚えていた。


「おお、何だこのメンツ。俺ら、校則違反かなんかで呼ばれた?」

「ちがーう!あんたらに情報聞きたいの!」

「え、怖っ」


長野くんと常盤くんは、保健室の空気を一気にくだけたものに変えた。

來が申し訳なさそうに言う。


「実は、俺、さっきこの2人にはもう軽く話聞いたんだ。ごめんな、早苗」

「なーんだ、それなら言ってよー」


それでも早苗さんはめげず、すぐに2人へ詰め寄る。


「で、ほんとに何も知らないわけ?」

「知らねーよ。俺ら基本、教室いないし」

「えー、あんたたちの方が同じクラスじゃん。酒井っちと友達だった私より知らないってどうなのよ?」

「むしろ、友達の早苗が知らない方がビビるんだけど」


言い合いが始まる。軽口なんだろうけど、どこか本気にも聞こえる。


「ストップ。仲がいいのはわかったから、落ち着いて」


來の一言に、3人同時に「仲良くないから!」と声をそろえる。


……この瞬間、わたしはちょっとだけ笑ってしまった。

言葉の応酬の中に、彼らなりの関係性が見え隠れしていた。