わたしはその後ろを静かに追う。
二人並んで窓際の席に座ると、電車が再びゆっくりと動き始めた。
窓の外の景色が少しずつ動き出す。
見慣れた街並みが、少しずつ遠ざかっていく。
「來、何か食べる?」
「……おにぎり買ってきたやつ?さっきの駅のコンビニで?」
「そう。ツナマヨと昆布。どっちがいい?」
「じゃあ……ツナマヨ」
「だと思った」
そんなやりとりも、いつもより心が温かくなる。
小さく笑った來が、おにぎりを受け取りながらぽつりとつぶやく。
「こういう時間、大事だよな」
「うん」
わたしも頷いたきり、それ以上言葉をつなげられなかった。
來が、窓の外に目を向ける。
山の稜線が遠くに見えて、だんだんと町の輪郭が薄れていく。
わたしは、そんな來の肩に、そっと頭をのせた。
驚いた様子も、嫌がる素振りもない。
ただ、自然にそのまま寄りかからせてくれる。
電車の振動が心地よくて、眠くなりそうだった。
でも、寝るのがもったいないと思ってしまうほど、この時間が愛おしかった。
誰にも邪魔されない。
何も考えなくていい。
ただ、來と二人で、今この瞬間を過ごしている。
それだけで、今はじゅうぶんだった。



